よく外国人にとって日本語を勉強するのはとても難しいと言われますが、それは本当なのでしょうか?

2017年にアメリカ合衆国国務省の外務職員局(FSI)が発表した外国語難易度ランキングによると、日本語は最も難しいカテゴリー4(”Super-hard languages”) に分類されました。同じカテゴリーには、アラビア語、中国語、韓国語も含まれています。

FSIのランキングは英語ネイティブにとっての難易度ランキングですが、アメリカ以外の国でのランキングでも、日本語はだいたい上位5位以内にランクされています。

世界一難しいかどうかは別として、どうやら日本語が難しい言語というのは本当のようです。

日本語の勉強で何が一番難しかったかを聞いてみた

弊社の外国語ネイティブ社員(全員JLPTのN1合格)に、日本語の勉強で何が一番難しかったを聞いてみました。

社員A. 漢字です!😆毎週漢字テストがあって、とても難しかったです。
社員B. やっぱり漢字です。形も、読み方も。
社員C. 漢字の読み方です。
社員D. 漢字の読み方や長音の「う」とか「ー」とか。音読み、訓読み、「ちょう」か「ちょ」か、「ぞ」、「じょ」の発音も区別が難しい。
社員E. 助詞、五段活用、授受表現と敬語です。
社員F. 一番最初の五十音図です。最初は仮名がすべて同じに見えていました。

社員EとFは中国語ネイティブなのですが、中国語ネイティブ以外では日本語の漢字が一番難しいようです。

日本語が難しい理由

上記のように、難しいと感じることはその人によって違いますが、一般的に多くの日本語学習者にとって日本語が難しい点を紹介します。

文字の種類が3種類ある(ひらがな・カタカナ・漢字)

日本語には、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類の文字があります。さらにアルファベットも使うので日常的に4種類の文字を使います。これは世界的に見てかなり珍しいです。

また英語のアルファベットは26文字しかないですが、ひらがなは46文字、カタカナも46文字、漢字にいたっては何と10万文字以上あります!毎日1文字ずつ漢字を覚えたとして、全部の漢字を覚えるのに270年以上かかります!!ただ、日常生活で使う漢字(常用漢字と言います)として覚える必要があるのは約2,000文字だけなので安心してください。

とにかく多くの文字を覚えて使い分ける必要があることが、日本語が難しいと言われる理由の1つです。

漢字の読み方が複数ある

ただでさえ種類が多くて覚えるのが大変な漢字ですが、実は読み方が1つではありません。「音読み」と「訓読み」と呼ばれる2種類の読み方があります。漢字は中国から伝わってきたものですが、中国での読み方に近い読みが「音読み」、日本での読み方に訳したものが「訓読み」です。

たとえば「山」の読み方には音読みと訓読み合わせて3つあります。
音読み:さん・せん
訓読み:やま
一般名称としての山は「やま」と読みますが、日本で一番高い富士山は「ふじさん」と発音します。

漢字によっては読み方がもっと多かったり(「生」は「せい・しょう・なま・い(きる)・う(まれる)・は(える)」など10個以上!)、音読みしかない訓読みしかないなど例外も多いので、覚えるのが大変です。

そもそも日本人でさえ、小学校の6年間で1,000文字、中学校の3年間で残りの1,000文字と9年間をかけて約2,000個の常用漢字を習います。外国語ネイティブがこれだけ多くの漢字を覚えるのは簡単なことではないと思います。

覚える必要がある語彙数が多い

また数の話ですが、日本語は他の言語に比べて必要な語彙数が多いと言われています。たとえば、日常会話の90%を理解するのに必要な語彙数は、英語が約3,000語なのに比べて、日本語は約10,000語です。

世界最大の英語辞典『オックスフォード英語辞典』と日本最大の日本語辞典『日本国語大辞典』に収録される語彙数はいずれも約60万語とあまり変わらないので、日本語の語彙が特別豊富という多い訳ではありません。

必要な語彙数が多くなる理由の1つは、日本語には同じ意味の用語がたくさんあり、それらを日常的に使い分けていることです。たとえば、英語のYouを表す日本語には「あなた」「君」「お前」「そちら様」「あなた様」「お宅」など少なくとも10個はあり、相手との関係や文脈によって使い分けます。

また日本語には、同じ意味の言葉に「和語」「漢語」「外来語」の3種類の言葉があります。「和語」はもともと日本で使われていた言葉、「漢語」は中国から来た言葉、「外来語」は中国以外の外国から来た言葉です。たとえば、ruleの和語は「決まり」、漢語は「規則」、外来語は「ルール」で、いずれも場面に合わせて日常的に使います。さらにオノマトペが他の言語と比べて非常に多くあり、softの表現だけでも「ふんわり」「ふわふわ」「もふもふ」など色々あり、それぞれに微妙なニュアンスの違いがあります。

このように色々な語彙を使うことで豊かな表現ができる反面、内容を理解するために必要な語彙数がどんどん増えていく要因になっています。

あいまいな表現が多い

これは日本語の問題というより、日本人の国民性に要因があるのですが、YesなのかNoなのか分からない表現がたくさんあります。

はっきり伝えることで相手に不快な思いをさせたくない、自分の言ったことが間違っていたときに相手に迷惑をかけたくない、相手がどう思っているのか分からないからとりあえず様子を見たいなど、いろんな理由であいまいな表現を使います。

あいまいな表現で代表的なものに「そうですね」があります。一般的には”Yes”の意味だけど、たとえば、「今度食事に行きましょう」と言われて「そうですね」と答えた場合、Yesの意味だけでなく、Noのときにも使うし、YesかNoかは今後の相手との関係次第で答えを先送りしたい場合にも使えます。

あいまいな表現は無駄な争いを避けて話をスムーズに進めるための日本人の知恵だとは思いますが、慣れないうちは相手が何を考えているのか悩むことがあるかもしれません。

日本語の簡単なところ

ここまで読んで、日本語は難しすぎて自分には無理かもと思った人もいるかもしれません。でも安心してください。日本語には簡単なところもあります。

発音

日本語は発音が簡単です。母音は「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の5つしかなく(英語は約15個)、音の数が他の言語に比べてかなり少ないです。

英語:約600
中国語:約2,000
日本語:約100

漢字の読みを覚えるのは大変かもしれませんが、読み方さえ分かれば発音は同じです。

文法

日本語の文法は英語などの他の言語に比べて比較的シンプルです。

日本言の時制は基本的に過去形と現在形の2つだけで未来形がありません。現在完了や過去完了のような細かい区切りもないです。
過去:私は昨日東京に行きました
現在:私は毎日東京に行きます
未来:私は明日東京に行きます
過去か過去でないかだけの2パターンしかないので、覚えやすいでしょう。

また名詞の使い方もとてもシンプル。性もないし、可算・不可算の区別もありません。さらに冠詞のルールもありません。

英語と文構造が逆(英語はS+V+Oだけど、日本語はS+O+V)、主語が省略される、助詞の使い方が複雑など、難しい部分もありますが、文法の勉強はスムーズに進むと思われます。

まとめ

ここまで日本語の難しさや簡単さを説明してきましたが、最初に書いたとおり日本語の何が難しいかは母語によって大きく変わります。中国語ネイティブにとっては漢字はそんなに難しいことではないし、英語ネイティブにとっては文法がまったく違うので難しいと感じるかも知れません。

難易度が世界一レベルにランクされた日本語ですが、日本語能力試験(JLPT)は毎年約100万人が受験して、最上級ランクのN1は毎年5万人以上も合格しています。毎日コツコツ勉強すれば必ずマスターできるので、頑張って勉強を続けましょう。